これで分母は足さないぞ!分数の足し算はこういうことだ!

ラベル名
分数に関する新しい記事を投稿いたしました。
こちらも参考にしていただければ幸いです。

 

算数で大きな壁となりがちな、分数の足し算。
つまずいてしまう小学生が多いことは勿論、脳が成熟した大人になっても理解できないこともあり、
人によっては非常に習得が難しい概念となります。

どのようにすれば概念を理解できるようになるか、
試行錯誤した記録をまとめさせていただきます。

背景

100人のうち15人は分数がわからない

発達障害児に関する研究をされていらっしゃる、筑波大学の熊谷恵子先生の論文では、
分数概念の形成に関する正答率が低かった、
少年院の子どもたちの一般的な知的能力レベルがIQ85であることに着目し、

分数のできなさがIQ85の境界線のレベルの子ども達の特徴を捉えている可能性もある。
通常学級において、IQ85未満の子ども達は、理論的には、通常の学級の中で15%程度いることになるため、
分数概念をいつどのように獲得させるかについては、
算数という教科学習上においても重要な問題であると考える。
(『学習障害児の算数障害の研究ー数概念と分数概念の獲得についてー』,熊谷恵子,2013年)

と仰っています。15%ということは、100人のうち15人は分数がわからないことになります。

分数がわからないと、割合もわからなくなりますし、
中学・高校の数学の内容がわからなくなることは言うまでもありません。
高校・大学入試や入社試験への影響も免れず、選択できる進路が制限されることになります。

分数の表記のわかりにくさ

分数はそれまで学習してきた数と異なり、独特の表記をします。例えば
$$\frac{2}{3}$$
では、分母である「3」は基準となる「1」の分割量
分子である「2」は「1/3」の数量を表しているのですが、
今までの学習では、全て数字を「数量」として認識してきたため、
中々分母が「1」の分割量であることを認識できないのです。

そのため、
$$\frac{2}{3}+\frac{1}{2}=\frac{3}{5}$$
と分母同士を足し合わせてしまう誤りが多発してしまうようです。

そこで、分数概念をまず学習し、分数の足し算を行う際に
通分が必要であることを理解させることを目指しました。

分数の教え方

図を用いた説明と、思考の視覚化

分数の定義を図で理解させる

分数が一体何者なのか理解できずにいるものの、機械的に通分を行って計算できる子もいます。
理屈がわからず機械的に行っているだけなので、
しばらく分数の学習から遠ざかると、計算方法を忘れてしまう状態なのです。

そこでまず、分数の定義を、図を交えながら伝えます。
「½は1を2つに分けた数、⅓は1を3つに分けた数なんだよ」
といった感じです。

定義については比較的理解しやすいらしく、ほとんどの生徒がここでつまずくことはありません。

分数の足し算を図で理解させる(IQ85以上なら理解可能?)

さて、頭を悩ませる厄介な曲者、分数の足し算です。
わかりやすく教えるため、このように図にして教えてみました。

分母の違う分数を重ねてみる

1を3マス×3マスの正方形と定義し、½はこの正方形を2分割、⅓は3分割することで、
それぞれの分数を視覚化できるようにしたわけです。

そして½+⅓の計算では、それぞれの図を重ねることで、
1が6分割されることを示し、1を表す正方形の中の一つの□の大きさが⅙になることから、
$$\frac{1}{2} = \frac{3}{6}   \frac{1}{3} = \frac{2}{6} $$
と通分され、合わせて⅚となることを伝えました。

この教え方で分数の足し算でなぜ通分しなければいけないのか、
という疑問が氷解した生徒がいた一方、
図が何を表しているのかわからない」「なぜ一マスが⅙になるのかわからない
という声も聞かれ、粘り強く説明すればするほど、
生徒が混乱する姿も見られました。

さらに、分数の足し算について、図を使って考えるように促してみたところ、
描き方が全く理解できないために、固まってしまう生徒も現れ、
この教え方に限界を感じていました。

私の母に至っては…
「½だからマスを2分割して…あ、そうか!分割したマスの中に1と2を入れればいいのか!」

と大真面目に描いてしまう始末で、お笑いの才能を感じさせられました(笑)

物を手で操作させることによる思考の視覚化

図による思考の視覚化では、
「どのような図を描けばよいかわからない」
ということで、簡単な操作で問題が解ける方法を模索しました。

何日か悩み続けたところ、
「物を使えば簡単に楽しくできるのではないか」
と思いつき、マグネットを切り貼りして、お手製の分数マグネットを作成してみました。

これを使って、早速実践です!

½+¼の意味

分母の「2」と「4」を見ると、衝動的に「2+4=6」としたくなる生徒は多数いますが、
そもそも+の記号は、「合わせる」を表すことを伝えます。

そして写真のように、½と¼のマグネットをつなぎ合わせておきます。
$$\frac{1}{2}+\frac{1}{4}=\frac{2}{6}$$
の誤りについては、⅙のマグネット二つを取り出して並べ、

等しくならないことを示します。

どの分数マグネットがいくつ分?

$$\frac{1}{2}+\frac{1}{4}=\frac{2}{6}$$
とはならないことは理解すると、次のような疑問が湧いてきます。

「それじゃあ、これは一体どうやって考えて答えればいいの?」

そこで、このように考えてもらうことにします。
「½と¼を合わせたものの長さを測ります。ですが、定規は使いません。
定規ではなく、分数マグネットを物差し代わりに使ってください。
どの分数マグネットがいくつ分になるか、調べてみましょう。」

この考え方については、次のねらいがあります。
分数マグネットがいくつ分になるか、と考えることで、分数の足し算においては、
基準となる分数の単位がいくつ分になるか
という観点で計算されることが理解できるようになります。

また、½の分数マグネットと、等数倍することで同じ大きさになる分数マグネットが、¼、⅙、⅛…となることを示し、分母が2の倍数であれば長さの計測に使用できることを伝えます。このようにして通分について理解してもらうのです。

それで、¼であれば½でも¼でも物差しとして使えるので、¼を使用します。

½の上に¼を乗せてみると、ぴったり2つ重なりました!

¼という物差しが3つ分となるため、
$$\frac{1}{2}+\frac{1}{4}=\frac{3}{4}$$
であることを算出することができました!

まとめ

分数は図による説明では、知能指数の低い生徒や学習障害である生徒にとっては理解しがたく、
また図による思考の視覚化では、「何を描けばよいかわからない」と固まってしまうこともあります。

そこで具体物を扱わせ、できるだけ操作を簡単にすることで、
どのような操作をすればよいかを理解させやすくし、
分数の足し算における思考プロセス、考え方を理解させることができました。

さらに「もっと難しい問題をしたい」という声も聞かれ、
意欲を引き出すこともできたように感じます。

しかし、具体物を使ったうえでの思考となるため、
具体物を使用できない学校の試験や入学試験では問題が解けないのではないか、
また具体物として用意できない分数(1/250など)の場合に応用できないのではないか、
と心配している部分もあります。

なので、いずれ具体物を使わなくとも計算ができるように、
抽象化していけるように支援していく必要がありそうです。

1 Star 15
読み込み中...
当記事がご参考になりましたら、ハートをクリックしてください^^

他の特別支援教育に携わる先生のブログをご覧になりたい方はこちら
他の家庭教師のブログをご覧になりたい方はこちら

2 件のコメント

  • すごい!!マグネット!!これを作ることもすごいし、その発想が出来ることにもびっくりです(゚Д゚)確かにこれすごく分かりやすいですね。あっきー先生の一生懸命さがものすごく感じられます。いつも思いますが、字も丁寧で読みやすいです(*^_^*)

    • のんのん先生

      いつもコメント頂き、しかもまたまたお褒めのお言葉を頂き、ありがとうございます!
      私はアイデア勝負…なところがあるかもしれませんね^^;
      仕事せずにいつもプラプラしてますが、そんな時間もどうやら役に立っているようですね(笑)

      ところがまだまだなのです、わからないの声が聞こえてきたので(笑)
      ということで、今度はその子のためにまた、別の教え方を考えています…

  • コメントを残す