教えても教えても、忘れていってしまう理由

学校教育・私教育を問わず、いくら教えども、何度言えども、
次の日にはきれいさっぱりと記憶から消えてしまう、
ということはよくあるのではないでしょうか。
(以下、このような生徒を「理解力の低い生徒」と表現させて頂きます)

私は家庭教師を始めて二年となりますが、
これまでに教えたことが次の指導の時に跡形もなく消えてしまい、
言うまでもなく、成績は上がらないどころか下がる一方…
「自分のしてきたことは無意味だったのではないか」
と悩むこともありました…(笑)

ところがようやく最近になり、この問題の原因を発見したので、
あくまで私見ではありますが、紹介させて頂きます。

忘れてしまう理由

①宿題を出さないから

単純に考えて、宿題を出さない、勉強を習慣づけさせていないことが挙げられます。
現在主流である学力向上の方法の一つである、宿題なのですが、
私は「強制させたところで、もっと嫌いになるのが関の山でしょ」
という異端な考え方の持ち主なので、宿題なんて出しません。

成績上がらなくても、意地でも出しません…(笑)

学習を行うことで、自分の能力が向上すると実感できるようになれば、
自然と自分から学習を行うようになります。
過去に見てきた生徒のうち、自分から机に向かうようになった子たちは、
指導を通して物事を理解できるようになり、
学習を通して何らかの対価を得ていると感じていました
(そのため受験が終わっても、自ら学習を続けていました)

逆に言えば、自ら学習を行わないということは、
まだ学習を行うことで得られる効果を感じられないからではないか、
と私は考えています。
これはもう、私の信念のようなものです。

そもそも宿題を課すことで期待していることは、
その概念を理解し、技術を身につけることです。
宿題をたくさん出すことの効果は、
多様な問題から規則性や法則を意識的にしろ、無意識的にしろ掴ませ、
身につけさせることにあります。

しかし理解力が低い生徒にたくさん問題を解かせたところで、
それらの問題に隠れている共通点を発見することは難しく、
ただの作業で終わってしまうことが多々ございます。
生徒も全く効果を見出せず、苦痛となり、不要なストレスを抱えてしまうこともあるので、
私個人としては、理解力の低い生徒に課す宿題は逆効果だと思っています。

②そもそも教わった内容が理解できていない

理解力の低い生徒に対しては、宿題を課して努力を強いることは逆効果だとは思ったものの、
宿題を課さずに彼らの成績を上げることの難しさは並大抵なことではありません。
このことは多くの教育関係者から同意を頂けると思います。

しかし、決して不可能ではないのではないか、と最近の私は考えています。
恐らく大変優秀な指導者であれば、
偏差値30台だった生徒が50まで引き上げることができた、
という話があっても、疑わない程度に可能性があると思う訳です。

なぜ不可能ではないと考えられるのか?
と申しますと、今まさに教えている理解力の低い生徒が、
教わった内容が身につくようになってきたからなのです。

では、どのようにすれば教わった内容が身につくのでしょうか?
彼らは理解する力が低い、もっと率直に言うと頭の回転が遅いため、
一般的な生徒と比べて何事を行うにしても時間がかかってしまうのです。

例えばこちらのグラフをご覧ください。

(出典:Wikipedia)

(横軸は「溶解度」となっていますが、「水100gに溶ける質量」と記しているものとします)
私「硫酸銅は100℃の時、75g溶けるね」
私「なら、80℃の時はどれくらい溶ける?」

こんな訊ね方をしても、答えられないのです。
なぜか…それは…
何のことを話しているのかわからないからなのです

この会話の中には、暗黙の了解が含まれています。
それが生徒には伝わっていないため、
何のことを話しているのか理解できないのです。

つまり…

私の反応 生徒の反応
グラフを見る

赤い曲線が硫酸銅の溶解度を表現していることを認識
(以下、硫酸銅に関して)
温度が100度の時、75g程度溶けることを認識
温度が80度の時、55g程度解けることを認識
(略)

(意味を持たない絵や記号のようなものとして認識)
「硫酸銅は100℃の時、75g溶けるね」と声をかける なぜ硫酸銅という言葉が出たのか、
なぜ100℃と75gという言葉が出たのか、
意味がわからない
「なら、80℃の時はどれくらい溶ける?」と訊ねる もはや何のことを話しているのか、全くわからない

このような状態であると推測されます。

生徒の方はグラフから得られる情報を収集する力がほとんど無いため、
全く話についていけないことが理解されるのではないでしょうか。

恐らく生徒からすると、ピカソが描いた作品を目の前にして、
その美術品の素晴らしさを説明されているような、
そのような感覚なのではないでしょうか。
(ピカソが好きな方、ごめんなさい)

なのでこの場合、グラフが表している曲線や罫線、
縦軸・横軸の意味から、教えなければなりません。
そんな当たり前のこと、少し考えればわかるでしょう、
なんて思ってはいけないのです。

私「赤い曲線は硫酸銅が、水100gあたりに溶ける量を表していて、
横軸が80ってところは、80℃って意味だよ。
横軸80と書かれているところにある縦線と、赤い曲線が交わるところが、
『80℃の時、水100gあたりに硫酸銅が溶ける量』を表しているよ」

と、かみ砕いてかみ砕いて説明する必要があるのです。

…書いていて頭が痛くなってきましたが、
彼らは情報収集能力・情報処理能力が劣っているため、
1つのことでさえ教えるのに、膨大な労力と時間がかかる訳です。

しかし決して理解できない訳ではない、
また一生理解力が伸びないわけではないと思っています。
(実際教えている生徒たちも、理解力が向上してきていると感じています)

私は平凡な人間なので、偏差値30からの逆転合格!なんてことはできませんが、
ほんのちょっとでも、一歩ずつ成長できている生徒たちを見て、
嬉しいやら、ほっとしたやら、様々な感情を巡らせています。

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